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2014.09.22 勝てません
普段、民事裁判に関して相談を受けていると、
「裁判は正しいほうが勝ち、悪いヤツが負ける」
と、ハナから信じ込んでしまっている相談者が結構いらっしゃることに驚かされます。

俺は金を貸したのに、アイツは返してくれない
     ↓
アイツが悪い、俺は正しい
     ↓
よって裁判になれば俺が勝つに決まっている!


確かに道徳観念としては正しいと思いますがね。
でも、ここで法律の専門家のハシクレとしては、相談者に対して時に無慈悲なお答えをしなければなりません。

「それで、あなたが相手にお金を貸したという証拠はありますか?」


仮に相手が署名した借用書などの証拠がなかったとしても、相手が自主的に「その通りでございます、確かに借りております」と事実関係を認めているならば何とかなるかもしれませんが、証拠はありません、全部口約束です、カネのやり取りは全て現金手渡しです、ということになると、いくら正義が我にあろうと、残念ながら相手が「そんなもん借りた覚えなんかねえよ」とシラを切ってしまえばそれまでです。
裁判所に訴えたところで、裁判官は全てを見通す神などではなく生身の人間なので、客観的な証拠に基づかなければ主張を認めてはくれません。
裁判というのは、自分が認めてほしい事実は自分で立証しなければならず、証拠もなしに「俺が正しいんだ」と言ってみたところで「はいはい、じゃあそこんところ証拠を出してね、証拠がないなら認められないよ」で終わってしまいます。

結局、民事裁判というのは、正しいほうが勝つのではなく、証拠を持っているほうが勝つ、ということなのです。


時に、弁護士さんが無理筋の相談者を体よく追い返す際に吐く台詞に
「弁護士費用がかえって高くつくから、この件は司法書士に相談に行ってらっしゃい」
というのがあるようです。
でも考えてもみてください。
こと簡易裁判所での民事訴訟代理に関しては、弁護士に依頼しようが司法書士に依頼しようが、依頼を受けた側がかける手間暇は同じです。
同じ仕事をしているんだから、弁護士費用も司法書士費用も基本的にはほとんど同額になるはずです。意味もなく司法書士のほうが安いなんてことはありません。

そして弁護士の台詞を「額面通り」に受け取った相談者が、司法書士のもとに相談に来てしまうという悪循環よ。








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