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久々にアイフル相手に過払請求訴訟をやっていましたが、勝訴判決をもらって、先日依頼者に無事お金が返ってきて、たぶん今後はうちのようなインディー系事務所にアイフルへの過払請求を依頼してくる人はいないでしょうから(笑)、アイフルが出してくる準備書面にわたしが前々から引っかかっていた「違和感」について書いてみます。

アイフルが準備書面で展開する主張のオカシサについては、方々の弁護士さん、司法書士さんがあらゆる論点で叩いたり茶化したりしているのでいちいち取り上げませんが、アイフルの主張のうち「悪意の受益者」に当たらないとの主張及びその理論構成が、わたしにはどうにも腑に落ちず長年モヤモヤしていたのです。

アイフル「17条書面や18条書面はちゃーんと発行するシステムを整えていたからウチは悪意の受益者じゃないよ。でも原告に発行した17条書面や18条書面は面倒だから証拠で出さないよ。そんなもの証拠で出さなくてもウチは17条書面や18条書面をお客さんに発行する一般的な業務体制を整えていたことは確定的に明らかなんだからね。」

もちろんアイフルの主張がおかしいんだから腑に落ちないのは当然だといえばそれまでなんですけどね。
ただ、いっとき一部の裁判所でこの「貸金業者の業務体制についての一般的立証」(ちゃんと17条書面や18条書面を発行する「システム」を整えていたとの立証)によって個別具体的な立証がなくとも貸金業者の悪意性が否定される、という事態が生じていたのも事実でして。

でも今回の裁判中に、わたしがアイフルに対して抱いていた「違和感」の正体がわかりました。

「あれ、そういえばアイフルって、何年か前に全店業務停止処分になってなかったけ?」

これだよ、「違和感」の正体は。
直接の業務停止処分の原因は個別の支店での法令違反行為だが、それならば何故「アイフル全店舗」が業務停止処分を喰らったのか。会社ぐるみでの業務体制の不備が指摘されたからではなかったか。


『…仮に被告が主張するがごとく,貸金業者が民法704条の悪意の受益者であるかを判断するにおいて,貸金業法43条の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる「特段の事情」があることを立証するにあたり,顧客ごとの具体的立証を要さず,貸金業者の業務体制についての一般的立証で足りるとすると,まさにその「貸金業者の業務体制についての一般的立証」によって,被告は「悪意の受益者」にほかならないことが証明されてしまうことになる。
  すなわち,被告は平成18年4月14日付で近畿財務局から,債権の取立等に関して貸金業規制法(当時)に違反する事実が認められたことにより,被告の全店舗のすべての業務につき業務停止の処分を受けている。
  被告の監督官庁たる近畿財務局から「社内規定等の不備や取り立て行為に関する指導の不徹底等,本社において違反行為を未然に防止するための適切な対応が講じられていなかったことが認められ,これらの違反事実がいずれも平成16年1月施行の改正貸金業規制法の趣旨を踏まえた内部管理態勢の再構築や法令遵守意識の浸透・徹底が十分に図られていなかったものと認められる」とまで断罪されるほどであり,被告が「会社ぐるみ」で,すなわち被告の「一般的な業務体制」として,全店舗において,債務者の自由な意思を抑圧する方法で,つまりその返済の任意性が否定される方法で利息制限法所定の制限利率を上回る高利の回収を行っていたことが明らかになったのである。
 なるほど被告が力説するように,個別具体的な顧客の個々の取引に関し立証は不要で,「貸金業者が,いわゆるみなし弁済が成立するように各要件が満たされるべく業務体制を構築していた」点すなわち「業務体制がどのように整備されていたかが問題とされる」というならば,被告はその「社内規定等の不備や取り立て行為に関する指導の不徹底等,本社において違反行為を未然に防止するための適切な対応が講じられていな」いという業務体制ゆえに,いかに貸金業法17条・18条に定める書面を交付したかのように取り繕ってみたところで,顧客の返済に任意性がなく貸金業法43条1項の適用がないことをはじめから承知していたということになるから,被告は民法704条の「悪意の受益者」そのものにすぎないということになるのである。』



いわゆる「みなし弁済」が認められるためには、①17条書面の交付、②18条書面の交付、③返済の任意性、がいずれもそろっている必要があり、どれかひとつでも欠けていることを貸金業者が知っていたならば、貸金業者は過払金の利得につき「悪意の受益者」であるとの推定を免れないわけですが、このうち①②の立証が個別具体的つまり本当にちゃんと書面が交付されたかどうかの立証を必要とせず「一般的な業務体制」の立証によって悪意性の推定が覆されるというならば、③についても債務者が任意に利息を返済していたかどうかの個別具体的な立証はしなくても貸金業者が「一般的な業務体制」として法律違反上等の取立行為を行っていたことを立証すれば貸金業者が「善意の受益者」でないことは明らかにできるはずですよね、という趣旨です。
原告準備書面に以上のような反論を書き加え、わたしとしてはスペシウム光線に対するスペルゲン反射鏡のようなカウンターを喰らわせたつもりでいたんですが、裁判官には無視されました(笑)。
あくまで裁判官は淡々と、わたしの「遊び」や「挑発」にはいっさい付き合ってくれません。
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2013.11.17 世間は狭い。
多重債務問題は沈静化したというかすっかり下火になったなあというのがほとんど全ての司法書士・弁護士の意見かと思います。
が、下火だろうがなんだろうが問題が根絶したわけでない以上、「多重債務者相談強化キャンペーン2013」と銘打たれた、多重債務者対策本部・日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会・法テラス共催の多重債務無料相談会に相談員として駆り出されているので、今日も今日とて一宮の相談会場に行ってまいりました。
幸いにして(いや、相談者側からすれば不幸なことなんですが)面接での相談者がいらっしゃったので、「何もすることが無く手持無沙汰」という相談員にとっての最悪の事態は回避。

自分の受け持った面接相談が終わってひと段落したところで、別ブースで相談員を務めていた愛知県弁護士会から派遣のK弁護士と名刺交換。

わたし「あれ、K先生、昨年の相談会にもいらっしゃってましたよね?」

K弁護士「林さん、昭和50年か51年のお生まれじゃないですか?」
わたし「ええ、50年生まれですけど」
K弁護士「XXのほうのご出身じゃありませんか?」
わたし「ええ、XXのほうの△△というところに実家があります」
K弁護士「S小学校のときの同級生じゃなかったですか?」
わたし「あ…えーっ」

そうなんだよ、去年の相談会でK弁護士から名刺をもらったときに「同姓同名の小学校時代の同級生がいたけど、風貌が違うしなあ、名前の漢字も別の字だったっけ?」とちょっとモヤモヤしていたのですが、言われてみればやや太い眉毛や目元にかつての面影が。K弁護士もモヤモヤしていたらしい。
いやはや世間は狭い。
かつての同級生が多重債務の相談者としてやってくることは…さすがにありませんでした。
今後もあって欲しくないですが。
さて、先日は市役所が無慈悲なんてことを書きましたが、これはお役所の縦割り行政っぷりに由来する、ある意味喜劇的ですらある状況を茶化しただけ。

それよりもはるかに本来的な意味で無慈悲なのが朝せ、もとい「地方税滞納整理機構」なる存在。
愛知県では、「地方税の滞納整理を県と市町村が協働しながら徴収率の向上、収入未済額の縮減を図るため」に、平成23年4月に設立されました。
県内6ブロックに存在しますが、一宮市も「愛知県西尾張地方税滞納整理機構」に参加しています。

以下、一宮市役所HPより引用

Q どういう人が機構の対象となるの?
A ○督促など市からの催告に応じない人 ○市県民税、固定資産税、国民健康保険税、軽自動車税などを滞納し、納税の相談や連絡をしない人 ○滞納額が高額な人 ○納税の相談をしても約束を守らない人 ○短期間で滞納の解消見込みのない人 などは徴収事務を市から機構に移管することになります。
 移管する場合は事前に予告します。

Q 機構はどんなことを行うの?
A 移管された事案について、財産を強制的に調査して差し押さえや公売の処分を強力に行います。また、滞納者の自宅などを強制的に捜索することも行います。

Q どんな財産を差し押さえするの?
A 土地、建物、給料、売掛金、自動車、家電製品など国税徴収法で認められたあらゆる財産を対象とします。


以上、引用おしまい

まあ早い話が、地方税等の滞納を重ねた者に対しては、市町村に代わり無慈悲で殲滅的な差押等方法で断固として徴収する、と恫喝しているわけですが、北の将軍様との違いは恫喝でとどまらず、本当に無慈悲に滞納税金等を徴収している点でしょうか。
愛知県が公表している資料によると、県内各地方税滞納整理機構が各市町村から引き継いだ滞納地方税等の徴収実績は、平成23年度が引継額の53パーセント、平成24年度が55パーセントにものぼるそうです。
市町村の徴収窓口がいわば匙を投げたような「悪質な滞納者」から、5割以上も滞納税金等を回収しているというんですから、すさまじい数字です。
こんなすごい数字が出てくるくらいですから、地方税滞納整理機構の手口は結構えげつないです。
「一括で払え」
「毎月100万円払え」
「親兄弟から借りて払え」
「サラ金で借りてこい」
「いちど月15万円ずつ払うと約束した以上はそれ以下の分納条件は一切認めない」
「払えないなら給料を差押する」
ちなみに、支払わないと本当に無慈悲に給与差押してきます(ただし地方税滞納整理機構には差押権限がないので、実際は市町村が差押をするわけですが)

まあ、血も涙もないわ、こいつら。
それでもって税金の支払い義務は免れられないんだから、ある意味、ヤミ金よりタチが悪いんです。

正直、税金を滞納する側がいちばん悪いには違いない。
ただ、税金を滞納してしまう事情もあれこれで、生活するだけで手一杯で払いたくても税金が払えない(いや、でも本当は税金分はちゃんと残して生活費をやりくりしないといけないんですよ。でもそれがうまくできない)という貧困層は、びっくりするくらい増えています。
それで、多くの場合、税金の滞納者は、それまでに市役所からさんざん滞納税金等の督促が来ていたにもかかわらず、頭から布団をかぶって「いやなものは見なかったことにする」ような態度をとっていたりします。市役所が窓口になっている段階で、ちゃんと出頭して話をつけておけば、相当融通を利かせた対応をしてくれるというのに。でもそれをしない。結果何が起こるか。

税金は払わない、呼び出しにも応じない ⇒ これは悪質だ ⇒ 地方税滞納整理機構先生、ここはよろしくお願いします ⇒ 目ん玉売れ、腎臓売れ、オラァ!


地方税等を滞納してしまっている貴方、悪いことは言いません、市役所から送付されてきた呼出状を持ってすぐに納税課窓口まで行きなさい。そしてあらん限りの誠意をもって滞納税金等の分納の相談をしていらっしゃい。

そして市役所からの呼出に応じなかったばかりに不幸にも地方税滞納整理機構から呼出をくらった貴方へ。
「手遅れです」
          
先日、愛知県および県内各市町村の行政職員さんたちを対象とした多重債務相談研修会の講師を務める機会があり、研修資料に使おうと最高裁判所が発表している司法統計のデータを集計していたのですが、客観的な数字は正直です。

申立件数の推移(司法統計より抜粋)
      個人破産     個人再生     特定調停
98年  108303件     *****     ******
99年  122741件     *****     ******
00年  139281件     *****     210785件
01年  160457件    *6210件    294426件
02年  214634件    13498件    416642件
03年  242376件    23612件    537015件
04年  211042件    26346件    381433件
05年  184422件    26048件    274771件
06年  165917件    26113件    260424件
07年  148276件    27672件    208310件
08年  129508件    24052件    102643件
09年  126265件    20731件    *55904件
10年  120930件    19113件    *28213件
11年  100509件    14261件    *11356件

参考までに2012年の司法統計も4月までのものが発表されています。
12年(1~4月)
個人破産申立件数 27158件(前年同月比△6695件)
個人再生申立件数  3479件(前年同月比△1596件)
特定調停申立件数  2298件(前年同月比△2882件)


さらに脱線気味ですが参考までに
某サラ金会社のれきし
91年 決算期の貸付残高 5630億円、ダンサーが激しく踊るテレビCM開始
96年 株式を店頭公開
98年 東証1部上場
02年 決算期の貸付残高 1兆7666億円、経団連加盟
09年 資金繰り悪化により新規の貸付停止
10年 会社更生手続申立、倒産


特に個人破産の申立件数と比べてみると、この会社の儲けがどこから吸い上げられていたのかが非常によくわかりますねえ。

それはさておき、改正貸金業法の成立時(06年12月)から、貸金業者寄りの国会議員さんなどからは常に「消費者金融利用者の半数はお金が借りられなくなって大変なことになる」「破産者が増える」「ヤミ金が増える」との声が挙がっていたのですが、改正貸金業法完全施行(10年6月)から2年が経過しようとしている今、客観的な数字として挙がってきているものはむしろ「多重債務問題は取り返しのつかなくなる寸でのところで危機的状況を脱した」と評価されるものばかりのように思えます。改正貸金業法はをおおむね順調に機能したといえるでしょう。

98年にはじめて年間10万件を記録して以来、ピーク時には24万件を数えた個人の自己破産申立件数は、遂に今年は10万件を割り込みそうです。
破産申立件数だけではなく、他の手続の申立件数も軒並み大幅に減少しており、しかも愛知県弁護士会・愛知県司法書士会の集計している相談事件数も多重債務関係のものは激減しています。さらに行政窓口での多重債務問題の相談件数も半減しているとのデータをいただいていますので、これはつまり「多重債務問題」そのものがピークを過ぎたのでしょう。
いわゆる総量規制によってお金が借りられなくなった債務者のうち、サラ金御用達国会議員さんの仰るところの「お金が借りられなくなって大変なことに」なるはずだった債務者の大多数は、適切に相談に訪れて「大変なこと」になる前に問題解決に結びついた。
あるいはまた、総量規制によってそれ以上借金を増やすことができなくなったために、「返済できる額の借金」にとどまったことによって、債務整理するまでもなく、「自転車操業によらない、身の丈に合った借金返済」をするようになった(つまり、収入の範囲内でなんとか返済できているのでわざわざ相談するまでもなくなった)のではないでしょうか。

サラ金御用達国会議員さんのもうひとつの主張「ヤミ金が増える」というのも、警察庁「平成23年中における生活経済事犯の検挙状況等について」をみる限り、客観的なデータとして消費生活センターへのヤミ金事件相談件数、ヤミ金検挙事件数、被害人員、被害額いずれも減少傾向にあり、他の弁護士さんや司法書士さんと話をしていても「ヤミ金事件が増えた」という声は全く聞かれません。
これは理由がハッキリしていて、ズバリ「ヤミ金は儲からない」。多くのヤミ金グループは、より安全でより儲かる振り込め詐欺にシフトしていってしまったのです。
もちろん、ヤミ金が完全になくなったわけではないので、今後とも取締は強化していくべきではありますが、「ヤミ金が増えると大変だからサラ金が高金利でカネを貸せるようにしろ」という主張はちょっと理解し難いなあ。

なお、現在、自民党の平将明衆議院議員が中心になって超党派による「『貸金業法改正』の影響と対策に関する勉強会」を立ち上げて改正貸金業法を文字通り台無しにする提言をまとめたり、民主党の桜井充参議院議員が座長になって改正貸金業法検討ワーキングチームを立ち上げたりしており(平議員も桜井議員も貸金業法改正に反対していた人たちです)、水面下で貸金業法はかな~りヤバい状況に追い込まれようとしているらしいです。
債務整理(借金の整理)という業務を取り扱っていて、個人的に一番イヤな思いをする瞬間。

残った債務を分割弁済することで(しかもこの金額だったら絶対払えるよね、という分割条件で)債権者と和解契約を取り交わし、やれやれこれで債務返済の目処がたちました、もう二度とウチの事務所の厄介になるんじゃないよといって債務者を送り出し数ヶ月~数年経過して油断しているところに不意を突く債権者からの電話。

債権者「先生、既に和解済みの債務者の○○さんの件ですが、先月分の返済金の入金が確認できません」(やや怒りモード)

わたし「えっ、そ、そうですか。わかりました、本人に確認してみます…」

債務者本人の負担が極力軽くなるよう、さんざん苦心して多数の債権者との間で調整したうえで和解しているので、まるで背後から中村主水に不意打ちされてバッサリやられたようなショックを受ける。

何故支払えないのか、とにかく債務者本人に事情確認の電話をかける。これがまたイヤな思いをする。債務者の代理人だったはずが、督促の電話なんてこれではまるで債権者の代理人のよう。

人の生き死にに直面したり、体調を崩したりと、自分自身が弱っているときに、一月ウン千円の支払いのことで債権者から責め立てられたり、債務者を問い詰めたりと、今にも自分を見失いそうになる今日この頃です。